東海岸のNomal Road
この間、棚を整理していたらNomal RoadのEP『The country that flee』が出てきました^_^
正直、このCDは見覚えがない⁉️ 誰からかもらったのかも(^^; 忘れることはままあります(反省⁉️)
ジャケットは四人の男性が白旗を掲げてこっちを観てる写真。落書き(というか、グラフィティ)っぽい字体でタイトルとグループ名が書かれています。どうやらヒップホップっぽい(*^^*)
食わず嫌いを辞めよう⁉️ と意気込んでいる今日この頃、とにかくヒップホップやテクノの壁にぶち当たる。今まで聴いてこなかったせいか、新鮮だったりなんじゃこりゃ⁉️と思ったり……⁉️
これも運命、昔聴いてイマイチだったから今まで存在を忘れてきてて、いま改めて聴けば気にいるかも)^o^( と都合よく考えて、アイフォーンにインストール👍
これ、すごくカッコいい! サウンドに古臭さを感じないのも、リズムのファンキーな感じも好み! 息子は音楽を聴いて、その評価軸の一つに「踊れるか否か」を持っている。息子に聴かせたら「サイコー! アツイネ」と自分のアイフォーンにインストールしてました(^.^)
白眉だと思ったのは二曲めのGET GET DOWN DOWN。テクノでは珍しい、遅いBPMの曲で、テクノはあまり聴かない私にはありがたいというか、耳に馴染む👂
聴きながらライナーを読んでてびっくり⁉️ この曲は「音頭」が元ネタになってるようだ。どうもメンバーの一人がアジア通だとか……(^.^) サンキュー、ノーマルロード!
なんだか一気にこの人たちのことが好きになってきた……ってところで、ライナー読んでさらにびっくり。この人たち、事故ですでに亡くなってるとのこと……( ; ; ) R.I.P.ノーマルロード⁉️
少しでも彼らのことが知りたくて、ネットで調べてみたけど、まったく情報がない⁉️ ライナーでは彼らは「一躍有名」になったそうだけど……。とはいえ約20年前のグループ、忘れられていたって仕方がないのかも。
なので、CDについてたライナーを以下に記載します^^
もしかしたら、ずっと探してたファンがいるかもしれないしね(^.^)
Nomal Road『The country that flee』
1999年、世界の終わりは来なかったが、彼らが世界に訪れた。それはNomal Road……しれっと現れて、ぼくたちの心を奪っていった。地元でTHUG Kraftwork(悪いクラフトワーク)とも呼ばれる彼らがドロップしていった一つのミニ・アルバムは、まるでたちの悪いウイルスのように蔓延して、ぼくらの頭を侵していった……。
彼らは東海岸の片隅で生まれた。Gary A、SignSignSign、Pickle T、W Eの四人は地元の不良仲間だった。ちょうど彼らの先輩格にA Tribe Called Questがおり、実際彼らのライブを手伝うなど恩寵をうけていたようである。しかし彼らは突然イギリスに飛ぶ。目的はただ一つ、音楽のためであった。仕事(ヤクの売人・カツアゲだとか言われているが真実は謎だ)で稼いだ金でヨーロッパの音楽を貪るように聴いたのだという。長期間滞在していたようで、世間的にもヒップホップがただのストリート文化から「ミュージック・シーン」のスターダムを駆けあがりはじめた頃だったこともあり、本場から来た彼らは珍しがられた。そして、若くて何でも吸収した。
このミニ・アルバムは地元に帰った後に作られたファーストEPだ。彼らの目は若さの持つ特有の無垢さの奥に、まるでスリで飯を食う老人のような狡猾さがある。飢えているのではなく、やっつけてやろうという闘争心もない。
そんな目を持つわけは、M1 aguarにある。曲名の意味は、素直に受け取ればスペイン語の「水」であるが、正解は違う。同時代に活躍したDJ RolandoのJaguar を文字って、頭文字を抜いたんだろう。サウンドは明らかに意識しているうえに、かれらとDJ Rolandoには交流があったとされている。この曲の大部分に手を施したSignSignSignは言う。
「俺は売れてるものに興味はない。ただ、良いものには目がない。そしてその二つがどのような関係にあるか、それも興味がない。Jaguarはいい曲だと思う。でもわざとらしいんだ。だから俺好みに作り替えた。売れるための意図を抜き取ってやったんだ、財布から金をくすねるみたいに。もっといい曲になっただろ?」
このコメントが発端でRolandoとSignは決裂したようだ。しかしこの件に関してはSignの肩を持ってしまうことを許してほしい。SignSignSignの好みの音楽は「飾りっ気がなく」「硬派で」「長い」とされている。たしかに90年代後半には技術が進歩してサウンドの幅が拡がった。しかしSignSignSignはそれを良しとしなかった。
「音楽の良いところはやかましいところじゃない。聴いてて最高に幸せってところだ」
思想は過激ではあるが、彼を天才たらしめる部分は、まさにその思想だったのだ。M2 GET GET DOWN DOWNはPickle TとW E(ダブル・イーと呼ぶ)の共作だ。流行りのビートよりも極端に遅いが、不思議なグルーヴのあるベースラインはPickle Tの特徴。そこに重なる生ドラムはW Eの手腕! Nomal Roadきってのアジア通であるPickle TによるOndo(音頭)とされている。
「おれはW Eにこう言った。ダンスミュージックは世界中にあるって。あいつは頷いて、でもイースト・コーストが最高だと返してきた。おれは首を横に振った。違うんだW E、これからビートはどんどん早くなる、その時俺たちはおじさんだ、腰が痛くて踊れないよ、だから今のうちにゆっくりなビートで踊れるものを作っておかなくちゃクラブで居場所がないだろってな」
その言葉通り、Pickle Tはスロウなビートを持ってきた。W Eは困惑したようだが、何度も聴くうちに上物のトラックになると踏んだようだった。W Eのドラムはシンプルでキレのいいビートを刻む、そして二人で編みだしたシンセベースが絡まってゆく。徐々に音数が増えて賑やかになるのはW Eの案だ。
「一曲目がシンプルなんだから、二曲目がどんどん盛り上がってってもいい。Signにも手伝ってもらったよ。クールな音の重ね方ならあいつが一番知ってる」
M3 Conyはメンバー全員での作品だ。この曲に込められた官能はただものではない。聴いているうちに、まるでまぶたの裏にいい女が見えてくるようだ。三人寄れば文殊の知恵、なんか比ではない。四人寄ればこんなに情感のこもったテクノが作れるのだ。シンプルなビートの底から湧きあがってくるテンションは、ドラッグのテンションでも、アルコールのテンションでもない。エロイ女が目のまえに来たときのそれだ。幾度もループされるyes...という呟きが心地よいグルーヴを生むと同時に、曲のコンセプトを強固にする。エッチだ。ラストのM4 Round Manはメンバー全員がマイクをまわし合うヒップホップトラックだ。しかし通常のラップではない。トラックが出来てからラップをとるのではなく、先にラップを録ってからトラックをつくったのだ。だからそれぞれのフロウに合わせて柔軟に形を変えるトラックが、Nomal Roadの特異さを語っている。しかも、このラップは一言もLという字を含んだ単語を使っていないのだ。Loveはもとい、Aloneもない。偶然かどうかは判らないが、タイトルにもLが含まれていない……ただ一か所、アルバムのタイトルを除いては。そのわけをどうしても知りたかった蓮實重彦は彼らに手紙を送って訊ねた。帰って来た手紙には一言、
「偉大なる先駆者Big Lに敬意を表した」
とあった。しかし、ぼくはこう考える。彼らがまだ子供だった頃、N.W.AがStrait Outta Comptonを世に放った。多感な時期にこの曲を聴いて、かれらは思想を持ったのだ。Round Manは「第一ラウンド」のもじったタイトルであると連想できるし、フックにある「Turn it on R(Rにしろよ)」とは、歌詞上の意味をなぞれば「右に曲がれ」であるが、アルバムのLをRに置き換えろ、という意味だとするならば、
逃げた先にある国→解放された国
と意味が変わる。リーダーであるGary Aはインタビューでこう語った。
「おれたちはただ音楽をやりたい。カッコいい曲、落ち着く曲、ポップな曲、なんでもやりたい。でもそれを許してくれるひとはいない。だから俺自身が俺を許す、そこから始めていく」
まるで抽象的な受け答えに、世間は「かっこつけすぎだ」とツッコんだが、彼らの思想を紐解けば、これほどシリアスな答えはない。
音楽は常に社会と、社会は常に人と、人は常に音楽と密接に関係しているのだ。
このEPを世に放った後、彼らは一躍有名になるが、セカンドEPの録音中に、スタジオへトラックが突っ込み四人全員が逝去した。大量のガソリンと共に音源も消えてしまったために、作りかけの新曲も聴くことはついぞできなくなってしまった。
R.I.P. Nomal Road!
追記
なんと、Nomal RoadのメンバーSignSignSignによる何らかのデモ音源が見つかりました!d(^_^o)
恐らく、Garyの兄の持つスタジオでの音源らしく、その音質や年代、音楽性などからデビュー前のものなのでは? とのこと。
是非ご一聴あれ!